自衛隊脅した与那国

南西防衛強化として陸上自衛隊の「沿岸監視部隊」配備計画に対して、与那国町長が法外な見返りを要求。



自衛隊を悩ますトンデモ交渉 ほくそ笑む中国軍
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沖縄県・与那国島の南南東の接続水域を航行する中国海軍のフリゲート艦=昨年10月(防衛省統合幕僚監部提供)

日本最西端の離島が自衛隊を悩ませている。テレビドラマ「Dr.コトー診療所」のロケ地として知られる与那国島(沖縄県与那国町)。南西防衛強化の第1弾として陸上自衛隊の「沿岸監視部隊」を配備する計画をめぐり、与那国町長が法外な見返りを求め、防衛省側をあきれさせた。町長は一体どんな人物で、何を根拠に法外な要求を続けているのか。トンデモ交渉の内実を探るべく直撃した。

迷惑料10億円の根拠

「それが10億円を要求する根拠になりますか」
4月上旬、与那国町の外間守吉町長にインタビューした際、何度も同じ質問をした。外間氏は3月になり突然、沿岸監視部隊配備に伴う「迷惑料」として、防衛省に10億円の支払いを求めたためだ。
防衛省は部隊を配置する用地の取得費を最大1億5千万円と見積もり、それ以外の支払いは拒否し、10億円の要求にも応じない構えだ。血税から10億円の拠出を要求するだけの積算根拠を、外間氏に示してもらうのがインタビューの目的だった。
実は、外間氏と直に交渉したことのある政府高官が漏らした言葉の意味も知りたかった。

◯◯◯を相手にしているような交渉なんだよ
高官はそう言った。もちろん◯◯◯も口に出していたが、ここでは伏せる。自治体の長を相手にした交渉とは思えないという趣旨だった。
インタビュー時間は1時間弱。その中で外間氏が10億円要求の根拠として挙げたのは3つ。(1)平成24年度の防衛予算に部隊配備関連で10億円を計上(2)町の施設整備などに対する国の補助金を積み上げると10億円(3)沖縄の宜野座村では米軍の土地賃貸料は年間10億円以上-というものだ。

要求は無理筋ばかり

結論からいえば、いずれも積算根拠とは受け取れない内容だった。
(1)については、防衛予算に10億円が計上されているのは事実だが、名目は「用地取得『など』」。支出項目の中には地代のほか、工事費や移転補償費なども含まれる。このことは、昨年2月の政府答弁書でも明確に説明されている。
(2)も煮詰まった計画とはいいがたい。外間氏の説明によると、ゴミ処理施設など30~40億円規模のインフラ整備を進めれば町が本来負担すべき費用は10億円に上るが、それを国に負担してもらいたいという。ただ、「特別措置法でもつくらない限り、そんな補助金は出せない」(防衛省幹部)とされる。
(3)はとても比較の対象にならない。宜野座村は米軍から年間18億円の賃料を得ているが、米軍に貸している村有地の面積は1400ヘクタール。与那国が提供する予定の用地は民有地を含め26ヘクタールにすぎない。宜野座村とはケタが違い、同規模の支払いを求めるのは無理筋といえよう。
こうした疑問点を投げかけると、外間氏はその時点ではいずれについても「(10億円の)積算根拠にならない」と認めた。しかし、後になると「根拠になり得る」と次々と前言を撤回した。

「10億円を担保するのが私の課題だ。理論は破綻していない」とも強弁した。
つまるところ、「(予算で)10億円が計上され、町民は10億円が入ると思っている」ため、何が何でも10億円の支払いを求める姿勢は崩せない、というのが本音だと感じた。

前言撤回を期待

外間氏の前言撤回の最たるものは「国防上の意義」をめぐる認識だ。
沿岸監視部隊は、領海や領空の「境界」近くのエリアに配置され、艦船や航空機をレーダーで捕捉する役割を担う。対ロシア警戒を目的に北海道の2カ所にだけ置かれていたのを沖縄にも配備することは、「北から南」への防衛力のシフトを象徴している。
与那国島北方約150キロにある尖閣諸島(同県石垣市)周辺領域で中国が威嚇と挑発を繰り返す中、部隊配置は不可欠といえる。
そもそも外間氏は、平成21年に自衛隊を誘致した張本人。その際、「安全・安心」という表現で自衛隊配備による国防上の意義を語っていた。
ところがインタビューでは最初、「国防の意義を言ったことはない」と明言した。そのため、誘致の際の「安全・安心」発言をただしたところ、あっさり発言したことは認めた上で、こう反論した。
「あの時点ではそう(国防上意義があるとの認識)だったが、今は経済効果だ」
こうも堂々と開き直られては戸惑うばかりだが、外間氏の見解にはまったく賛同できない。
4月23日には尖閣周辺の日本領海に中国の海洋監視船8隻が一挙に侵入。空では中国軍の戦闘機など40機以上が尖閣周辺に押し寄せてきた。中国海軍が意のままに太平洋へ出入りできるようにするため、先島諸島を一括占領する危険性も指摘される。
沿岸監視部隊の配置という国防上の意義は、日々高まるばかりなのだ。
監視部隊の与那国配備が頓挫すれば、ほくそ笑むのは中国人民解放軍。それに対する町の備えは、2人の警察官と彼らの携行する拳銃2丁のみ。1572人の町民の安全と安心を守るためには、陸自部隊の配置は待ったなしだ。
ここはもう一度、外間氏の前言撤回を期待したい。もちろん撤回すべきは「10億円要求」だ。(半沢尚久)
(2013.5.12 18:00 MSN産経ニュース)

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南西防衛強化 沿岸監視、用地交渉で壁

自衛隊による「南西防衛強化」の第1弾が暗礁に乗り上げている。日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)に陸上自衛隊の「沿岸監視部隊」を配備する計画について町側との用地交渉が折り合わないためだ。与那国島北方約150キロにある尖閣諸島(同県石垣市)周辺領域で中国が威嚇と挑発を繰り返す中、部隊配置は待ったなしで、海・空戦力の増強も急務といえる。
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日本の南西諸島防衛

10億円の「迷惑料」

『迷惑料』10億円は支出できない」「白紙も視野に検討せざるを得ない」
君塚栄治陸上幕僚長は18日の記者会見で、いつになく厳しい口調で語った。与那国町の外間守吉町長が要求した沿岸監視部隊配備に伴う「迷惑料」の支払いには応じられず、配備計画の見直しもあり得ると明言したのだ。
沿岸監視部隊は、領海や領空の「境界」近くのエリアに配置され、艦船や航空機をレーダーで捕捉する役割を担う。対ロシア警戒を目的に北海道の2カ所にだけ置かれていたのを沖縄にも配備することは、「北から南」への防衛力のシフトを象徴している。
目的はむろん、中国ににらみを利かせるためだ。防衛省は与那国島を断念する場合には石垣島(同)を検討している。
ただ、「低空で接近する中国機の早期探知には、より中国側に近い与那国がベスト」(自衛隊幹部)とされ、石垣だと警戒監視能力が低下する恐れがある。

中国2つの常態化

監視部隊の配備を急ぐのは、中国側の2つの「常態化」に起因する。
「海軍の5大兵種(艦艇や潜水艦など)は毎年数回部隊を組織し、遠洋訓練を行う」。中国海軍司令官がこう宣言したのが4年前。以降、海軍は遠洋訓練を常態化させている。艦艇は太平洋への「玄関口」にあたる沖縄本島と先島諸島の間の海域を頻繁に通過するようになった。
威嚇と挑発も常態化させた。昨年9月の尖閣諸島国有化後、海洋監視船などの中国公船が領海侵犯を繰り返し、今月23日には監視船8隻が日本領海に侵入した。海上保安庁は平成27年度までに尖閣専従部隊を創設するが、政府高官は「部隊が想定する対応能力を上回る事態だ」と危機感を強める。昨年12月には中国国家海洋局所属の航空機による尖閣周辺で初の領空侵犯もあった。
領域を死守するため、自衛隊は他の対処能力強化にも努めている。空自は早期警戒機E2Cの拠点を那覇に置き、宮古島(沖縄県)と高畑山(宮崎県)の地上レーダーを最新型のFPS7に更新し、捕捉範囲を拡大する。海自は潜水艦を重点的に配置、陸自は水陸両用車を購入する。6月には米国での離島奪還訓練「ドーン・ブリッツ(夜明けの電撃戦)」に陸海空3自衛隊が初参加する。日米共同対処能力を向上させ中国軍を牽制(けんせい)する狙いがある。
日本の南西防衛の強い姿勢を米軍に示すためにも、沿岸監視部隊の配備は欠かせない。(半沢尚久、峯匡孝)
(2013.4.30 15:01 MSN産経ニュース)

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