大阪府警・複数警官が虚偽調書作成

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大阪府警堺署留置場で起きた公務執行妨害事件の対応が適切だったと装うため、大阪府警の複数の警官が虚偽の調書を作り、裁判では虚偽調書に沿って警官2人が事実と異なる証言、審理がやり直される事態になった。



複数の警官が虚偽調書作成か 大阪府警が捜査

虚偽調書作成と偽証問題の構図
留置場で起きた公務執行妨害事件の対応が適切だったと装うため、大阪府警の複数の警察官が虚偽の調書を作っていたことが朝日新聞の取材で分かった。事件で起訴された被告の裁判で、警察官2人が虚偽調書に沿って事実と異なる証言をしたとして、審理がやり直される事態になっている。府警は組織的な隠蔽(いんぺい)工作の可能性があるとみて、大阪地検と連携して虚偽有印公文書作成・同行使と偽証の容疑で捜査を始めた。
相次ぐ不祥事を受け、警察庁は昨年8月に「組織的隠蔽の根絶」などを柱とした防止策を打ち出した今回の問題はこれ以降に起きており、警察の隠蔽体質の根深さが改めて浮き彫りになったといえる。
関係者によると、昨年12月2日、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、堺署に勾留されていた男性(40)が留置場で騒いだ。男性は署内の「留置保護室」に収容しようとした留置管理課の巡査長(33)の顔を殴ったとして、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。
朝日新聞社
(6月9日(日)7時48分配信 朝日新聞)

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警察、巣くう隠蔽 虚偽調書への疑問にも「ええんや」

警察改革が進められるなか、新たな不祥事が明らかになった。大阪府警で起きた虚偽調書の作成問題。関与したとされる複数の警察官は体裁を取り繕うために「うその上塗り」を重ね、裁判での偽証という深刻な事態を招いていた。警察組織の根深い隠蔽(いんぺい)体質が改めて問われている。
昨年12月2日夜。府警堺署の留置場で、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕・勾留中の男性(40)が騒ぎ出した。「ほかの留置者と別々にする必要がある」。当直勤務中の巡査長(33)はこう判断し、男性を留置保護室に入れようとした。
男性が騒ぎ続けたため、同僚の巡査(25)と上司の警部補が駆けつけ、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕。別の当直署員が逮捕までの経緯をまとめた調書を作ることになり、巡査長と巡査が「巡査長の独断で男性を保護室に入れた」と説明。それが調書に記された。
「こんなんじゃ、あかんぞ。全員が処分されるぞ」。関係者によると、巡査長の独断で男性を保護室に入れたとする調書ができたと知った警部補はこう言い、現場にいなかった巡査部長が指揮したことにするよう提案。いったん調書を作った署員は疑問を投げかけたが、警部補が「ええんや」と押し切った。
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事件処理は刑事課に引き継がれ、4日後の12月6日以降、騒ぎを再現する実況見分が実施された。現場にいなかった巡査部長がいたことになっている――。調書が虚偽だと気づいた刑事課員が巡査長と巡査から事情を聴くと、調書の作りかえが警部補の指示だったことを認めたという。
この時点で正しい調書に戻されていれば、問題はそれほど深刻にならなかったとみられる。ところが、そうはならなかった。
「お前らがすり合わせたことにする」。同月15日、刑事課員は(1)独断で男性を保護室に入れたことを勝手な行動と注意されることを巡査長が恐れた(2)巡査長と巡査が口裏を合わせ、巡査部長の指揮を受けて男性を収容したことにした――とする虚偽の調書を新たに作り、巡査長らに署名を求めた。「公判になったら偽証するしかない」。巡査長らは署名した。
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そして、今年3月1日に大阪地裁堺支部であった男性の公判。「巡査部長の指揮が必要だったのではないかと不安になり、(巡査と示し合わせて)話を変えてしまった」。公務執行妨害事件を立証する検察側の証人として出廷した巡査長と巡査は、警部補の指示を伏せたまま作りかえられた二つ目の虚偽調書に合わせて証言した。
公判は結審し、堺支部は判決を5月7日に言い渡すと決めたが、府警内部で一連の経緯が発覚。巡査長らは先月中旬、府警の内部調査にこう語ったという。
「裁判でうそを言えば犯罪になるとは思った。真実を守る警察官がうそを言い、責任を感じている」

■生かされぬ教訓
関係者によると、判決期日が取り消された男性は拘置所に勾留されたままになっている。今後、偽証したとされる巡査長と巡査が改めて出廷し、検察側が求刑し直すことになるが、判決の見通しは立っていない。
男性の弁護人は朝日新聞の取材に「組織的にうそを塗り重ねており、悪質だ。被告の勾留が不当に長く続き、大きな不利益を被っている」と話す。

捜査機関が事実と異なる調書を作ったケースは過去にもある。容疑者らの供述のつじつまを合わせたり、見立てに沿った内容にしたりするためだ。一方で虚偽の調書の通りに法廷で証言したとされる問題が明らかになるのは異例といえる。
1999年に埼玉県桶川市で起きたストーカー殺人をめぐる告訴調書改ざんなど相次ぐ不祥事を受け、警察庁は警察改革を進めた。だが、不正や不適切な捜査は絶えず、2011年に長崎県で起きたストーカー殺人でも、千葉県警の捜査員が被害届の受理を遅らせて慰安旅行に出かけていた。
「『警察改革の精神』の徹底のために実現すべき施策」。警察庁は昨年8月、こう題した不祥事防止策を打ち出し、告訴や告発の迅速・確実な受理と対応▽厳正な調査・検証の徹底▽組織的隠蔽の根絶――などを都道府県警に求めた。こうした中で起きた今回の問題は、改革が容易でないことを示している。
なぜ、警部補は巡査部長が現場にいたかのように装わせたのか。なぜ、刑事課員は警部補の指示を隠したのか。大阪府警は現在、虚偽有印公文書作成(1年以上10年以下の懲役)と偽証(3カ月以上10年以下の懲役)の疑いで内部捜査を進めている。
捜査機関の不祥事に詳しい甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「過去の不祥事の教訓が生かされていない。府警には、徹底した検証と捜査を尽くして何が起きたのかを明らかにする責務がある」と指摘している。(岡本玄、西村圭史)
     ◇
■大阪府警の虚偽調書作成と偽証問題の経緯
※肩書は当時

【2012年12月2日】
(1)男性が留置場で騒ぎ、留置保護室へ。独断で収容を決めた巡査長を殴った容疑で男性が逮捕され、巡査長と目撃した巡査の調書が作られる
(2)警部補の指示で調書が「巡査長は巡査部長の指揮のもとで男性を収容した」と作りかえられる
【同月6~15日】
実況見分で調書作りかえが発覚。刑事課員は警部補の指示による作りかえを隠し、巡査長が独断で男性を収容したことを「上司に怒られるのが嫌で口裏を合わせた」とする調書を作る
【同月21日】
男性が公務執行妨害罪などで起訴される
【2013年3月1日】
巡査長と巡査が男性の公判に証人出廷。刑事課員が作った調書に合わせて証言
【同月27日】
検察側が男性に懲役3年6カ月を求刑。その後、府警内部で虚偽調書と偽証問題が浮上
【5月2日】
検察側が5月7日の判決期日の取り消しを請求。大阪地裁堺支部が認め、審理再開
【6月下旬以降】
巡査長と巡査の再尋問
(2013年6月9日7時49分 朝日新聞)

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